update 2004/8/24

2004年8月

● 野外キャンピング

家の中にテントを張ってという話を書いた所,あちこちから「意味ないじゃ ん」という声が聞こえてきました.想像力さえあれば,室内だろうが野外だろう が,キャンプの雰囲気は楽しめると思うのですが,あまり賛同者は出て来ないよ うです.それならばという訳で,本当に野外(とは言っても家の裏庭ですが)にテ ントを張って一夜を過ごしてみることにしました.

このキャンプ,実はもう一つの目的があります.昼間は庭をリスが駆け回っ ていますが,どうやら夜間,何か別の動物が我が家を訪問しているようなのです. 試しに,夜,鶏の骨をいれた皿を庭に置いていたところ,翌朝には綺麗さっぱり 無くなっていました.何でも食べるリスでも,さすがに骨は食べないと思うので, 何か別の動物が夜間徘徊しているようです.考えられるのはコヨーテ.これを見 極めてやろうと,一人,庭のテントにこもることにしました.今夜は満月.遠吠 えをするコヨーテも絵になります.この文章は,この蟄居のリアルタイムレポー トでもあります.


観測基地の準備

庭の片隅にテントをセッティング.この時期にしては珍しく雨が降りそうに なかったが,防寒の意味もあり,念の為にフライシートをかぶせておく.7月末 とは言え,ロスアラモスの夜は寒い.

レジャーテントなので,あまり居住性は良くない.エアーマットを敷き,枕 と肌布団を放り込んでおいた.また,ガレージから長いケーブルを使って電気を 引いておいた.テント内には,電気スタンド,ノートパソコン,デジタルカメラ, 懐中電灯,暇潰し用の文庫本,それに酒を少々.

テントの近くには,ドーナッツを入れた皿を置いた.肉のようなものの方が 良さそうだが,以前,腐ったパンで実験したときもしっかり食べられてしまった ので,ドーナッツだって食べるだろう.


観測開始

夜10時半,テントに入る.しばらくは家人がまだ起きていたせいか,家の明 りが庭に洩れて来る.やがて家の電気が消され,庭は真っ暗になった.しばらく テントの中の電灯を点けずに外を眺めていた.

見えるものは,数百メートル離れた台地の家並の灯,冷たく冴える満月.普 段なら天の川さえ見えるロスアラモスだが,今夜の月明りでは,星の数もずっと 少ない.秋の夜のように,虫の鳴き声が続く.時折,テントが風になびいて,ハ タハタと音をたてる.家の庭とは言え,かなり心細い.照明を点け,パソコンの スイッチを入れた.

パソコンにCDを幾つかコピーしていたのを思い出し,それをかける.が,入っ ていたのは,ショスタコービッチの弦楽四重奏.深夜,酒を飲みながら一人聞い ていると,頭がトリップしてくる.

観測結果

待つ事数時間,何も起こらない.同時に睡魔も襲って来る.パソコンの灯を 警戒されてしまったか,昨夜の鶏の骨で,まだ満腹なのか,あるいは腐ったパン にあたったのか.

やがて,待ち時間と共に増加するアルコール摂取量による睡魔には勝てず, 観測を投げ出して布団をかぶった....と言うとカッコ良く聞こえるが,要す るに気づいたら朝だった.

おとりのドーナッツは,そのまま残っていた.結局,昨夜は何も起こらなかっ たようだ.戦いは続く.今度は新月の晩に挑戦しよう.漆黒の夜に遠吠えするコ ヨーテも絵になりそうだ.


● どこが更新されるの?

夜中,皆が寝静まった後,一人この文章を書いているので,女房(コテコテ の文系,朝型)が新しい文章を目にするのは翌朝です.ちなみに僕はゴチゴチの 理系かつ夜型.僕がベッドから這い出して来た頃には,大体2,3の誤字脱字が発 見されており,喜々として報告する声を,起き抜け20%稼働状況の頭で聞いてい ます.

ページの改訂頻度は,不定期かつ気が向いたら,の週1,2回.さほど多いわ けではありません.日記をつけられない性格なので,定期的にやるのは絶対無理. でも,女房の

「今日はどこが更新されるの?」

という声を聞くと,何か面白い事を書かねばという,ある種のサービス精神 が首をもたげて来ます.何か書くネタは? でもひっきり無しに書いていては, いつか必ずそれを義務のように感じてしまいそう.

もっとも,身内とは言え最低一人は読者が居ることが分るから,文章を生業 としているわけでもないのに書き続けらるというのも事実.それに,最近ではこ の日々雑感の感想を送ってくれてる方もいらっしゃるし.どうせ取るに足らない 雑文を書き綴っているだけなので,難しく考えずに居るのが一番かな.

「今日はどこが更新されるの?」

「どこも更新しないよ」

とりあえずこう言っておけば,もし気が向いて新しい文章を書いたとき,読 者はとても得した気分になる筈.同じサービスでも,期待していないときに受け るサービスは,始めから期待したものよりもずっと効果的,と言ったのは,バブ ルたけなわの頃の経済学者だったか,あるいは博多中洲に勤めるおねえさんだっ たっけ...


PS: ほんとは,更新の全然プレッシャーなんて感じてないよー.イタズラ好 きのリスが日本語を読めるなら,リスのためにだって書いてあげたいくらい.


● ならが

「誤字発見」の報告があったものの,それが何処だったか分らないと言う. 「"○×しながら"っていうのが,"○×しならが" になってたと思う」という事 なので,さっそくgoogleで "ならが" と "aspenleafjp" をキーワードに検索し たところ,なんと全く同じボケが2箇所も発見されました.もう修正しましたが, まだgoogleのデータベースには残ってるかも.良い子は真似しないように.

しかしながら,「○×しならが」って何度も書いていると,「しならが」の ほうもなんだか良いように感じてきて,「あれ,どっちが正しいんだっけ?」と 一瞬考えてしまいます.そこで,再びgoogleの出番.「ならが」というキーワー ドをググって見ました.

1万件以上の検索結果の内,最初の方に出て来るのは,"「〜なら」が" みた いな文章の断片で,これは至極真っ当.それから,"奈良が好き" のような固有 名詞のパターン.これも面白くない.でも,その後からぼちぼちと,正当 "なら が" のパターンが出て来ます.

"どのくらいならが安全" と "採算が合わないならが":これは「が」を消し 忘れたものと思われ.

"〜しならが":これは僕のボケと同じパターン.

"残念ならが" と "当然ならが":これもかなり正しい日本語に聞こえる. ちなみに "残念ならが" だけを検索すると553件,"当然ならが"は94件がヒット.

"○×でありならが" と "○×もさることながら":これもじっと眺めている と,なんだか正しい.しかしならが,これらもある意味,上の例と同例と考えら れます.

"ボタンを押しながら":この手の間違いは数え切れないほど多いようです. 多分,何か別の事を考えならがコンピュータのキーボードを叩いている人が多い のでしょう.俗に言う「ならが族」です.ひらながが続くと,タイプミスをして いても,うかっり見過ごすことが多いので,当然ならがそういう部分には細心の 注意が必要です.


● メールボックス

よくアメリカ映画やドラマに出てくる,家の前に立てられたメールボックス. 郵便が配達されるたびに,箱の横の小さな旗を立ててくれるという,あれです. 近所を観察してみると,全部の家がメールボックスを立てているわけでは無いよ うですし,我が家も玄関横の壁に郵便受けが付いているだけでしたが,なぜかあ のメールボックスが欲しい.とっても欲しい.あれがあったら,きっとアメリカっ ぽく見える.あれがあったら,郵便が沢山来るような気がする.

というわけで,ホームセンターにメールボックスを探しに行って来ました. さほど選択肢があったわけではありませんが,cider mailbox kitというものに 決定.郵便箱が木の板のケースに入ったようなデザインで,ちょっと山小屋風の 我が家の外観に合いそうです.

家に持って帰り,さて組み立てようと箱を開けると,木製家具風の外箱の写 真と中のパーツの雰囲気がだいぶ違います.中に入っていたのは,ノコギリの歯 の跡も生々しく,まるで工事現場にあるような木材そのままといった感じ.この ままでも悪くは無いとは思いましたが,少々手を加えることにしました.

まずは,表面をSander(電動紙やすり)で磨きます.次にニスを塗って,出来 上がり.玄関前に立てて,後はニスが乾くのを待つばかり.

で,突然の雨.


● ペルセウス座流星群

いよいよペルセウス座流星群の季節.Los Alamosは高地かつ町の灯も少ない (要するにど田舎)なので,天体観測にはもってこいの場所です.夕方は雲が多かっ たものの,星が出る頃にはすっかり晴れました.流れ星を見つけて,給料が上が るように願おうと,家族全員裏庭に出ました.月あかりも無く,天の川もはっきり と見え.今夜の星空はまるでプラネタリウムのようです.

最初は立って星空を眺めていましたが,さすがに首が痛くなり,段ボールを 庭に敷いて寝転がりました.寒いので布団も用意.ついでにビールも用意.

夜空を注視すること数十分.娘が「土星って,どれ?」と聞き,「輪っかの ついたやつ」と僕言うと,

「そんなの見えるわけないでしょ.東の方のあのポプラの木のあたりじゃ...」

と家内が言うので,そっち見たその瞬間,
「あっ!」「流れた」「見えた見えた,すごーい」
「えっ,どこ?」
「すっごく大きい流れ星,見えなかったの?」
「だって,ポプラの木とか言うから,そっち見てたやんか」

仕方無く,再び目を皿にして,ペルセウス座の方をしばし注視.が,なにも 起こらない.起きあがって瓶ビールをラッパ飲みしたその瞬間,

「あっ! また流れた」

クヤシイ! 今度流れた時は「おほしさま,どうかお願いですから,流れ星 が見られますように」と願おう.などとアホな事を考えていたその時,まさに ペルセウス座からカシオペア座にかけて一筋の光が流れた.しかも,丁度この場 所,僕以外からは見えない位置にあります.

「あ,見えた!」

やっと願いが叶ったと思ったのもつかの間,家族全員が

「うそー」

嘘ついてなんになるんだよ.


● 小さなお別れ

少し大きめの野鳥のために,フェンスの上に餌台を取り付けました.リスに 横取りされないようにネズミ返し風の作りにしてみたのですが,御覧のとおり, いとも簡単に餌台に入り込み,鳥の餌を頬ばってます.君達の餌は地面に用意し てるだろう,といくら言っても分ってくれません.今日もおいしいものを求めて, リス達は庭の中をちょろちょろと走り回っています.

今日は太った猫も庭に来ています.リスを狙っているのかとは思ったものの, よく見かける猫だし,多分どこかの家の飼い猫だと思い,さほど気にも留めませ んでした.

程無くして台所から家内の「あっ!」という声.「捕まえた!」

あわてて裏庭に出ると,猫は口にリスをくわえて隣の家の庭に逃げて行きま す.皆で追いかけると,猫はこちらを向き,獲物を下に置いて得意げにこちらを 見ています.僕は猫を追い払い,噛まれたリスを抱き上げましたが,大きな 黒い目はぱっちりと開いたままで,すでに息をしていません.

リスを手に乗せてみたいとずっと思っていたのに,こんな形で現実になると は思ってもいませんでした.ふさふさとした毛に包まれたリスの体は思ったより もずっと小さく,でもまだ生きているとしか思えない暖かさです.

もしかしたらショックで気絶しているだけかも.さすったり手足をゆらした りしましたが,反応はありません.一縷の望みにすがりながら,小さなベッドを 作って体を温めました.でも,手の先の方から次第に体が冷たくなっていき,結 局蘇生することはありませんでした.

その後,僕は昼休み中だったので仕事に戻りましたが,家内と長女はリスの 体が冷え切ってしまうのを見届けて,小さなお墓を作りました.5歳の長男はリ スの墓にたたずみ,ずっと動こうとはしなかったそうです.


● 真夜中の訪問客

野外キャンプで果たせなかったコヨーテの撮影に,再 チャレンジ.今回の観測では,nightshot機能付きデジタルビデオカメラなるハ イテク機器を導入しました.そう,白黒ながら暗闇でも撮影可能,しかも洋服も 透けて見えると騒がれた...いや,そんな目的で購入したんじゃないですよ.

閑話休題(それはさておき),今回はテントを止め,室内から見張ることにし ました.匂いでケモノに感づかれるのを避けるためで,寒いからと言うヤワな理 由では決してございません.

今回の餌は,うーんと奮発して,骨付き鶏肉.これを庭先に置き,件のデジ タルビデオとデジタルカメラ・懐中電灯を用意し,家の中の照明を消して,庭の 見える台所の窓横に陣取りました.

待つこと,数時間.ついに我々取材班はコヨーテの撮影に成功した! いや待て,この背中の白い筋は...


スカンク !

照明を当てデジカメで撮影することも考えましたが,スカンクはある意味, コヨーテよりもずっと危険.一発食らうと,数ヵ月は匂いが取れないそうです. 気づかれないよう,こちらの方が逆に息を潜め,スカンク様のお食事が終るのを 静かに見届けたのでした.

それにしても,色んな動物が庭にやってくるもんだと驚いています.そろそ ろサイトの名前を,"Life in Los Alamos" から "wildlife in Los Alamos" に しないと...


● 雹

さほど真面目に更新するつもりのなかったこのセクションですが,今月は何 かと事件が多く,すでに8件目となってしまいました.本日の御報告は「雹」で す.読めますよね.

日本でも,夏場,雹が降ったというニュースを良く聞きますが,南国育ちの 私は雹というものを見た記憶がありません.なので,Los Alamosで雷と共に雹が 降ってくると,物珍しさゆえに得した気分です.もっとも,せいぜい氷のカケラ が雨混じりにぱらぱらと降ってくる程度ですが.

さて,今日の雹はかなり強烈だったようです.実際に降っていた所には遭遇 しませんでしたが,あたり一面真っ白になり,まるで雪景色.軒下には屋根から 落ちた雹で小山ができています.粒は1cm弱.写真のボールペンの直径は8mmです. どこかの雹の解説として,粒径が5mm以下なら霰(読めますよね)と書いてありま したので,合格でしょうか.もっともこれは日本の基準ですけどね.英語なら どちらもhailです.


● ズッキーニ地獄

何故か家庭菜園をしている知人が多く,収穫された自家製野菜をよく頂きま す.さらに何故だか,自家製野菜と言うとズッキーニと州の法律で決まっている のか,夏も終りに近いこの時期,大量のズッキーニが押し寄せて来ます.ズッキー ニは比較的好きな野菜ですが,何分巨大なズッキーニがやって来るので,数日間 はズッキーニ料理が続くことになります.ひたすら食べ続けなければならない, 何とか地獄というのがありますが,まあそんな所です.

我が家の料理長兼料理の部屋担当者に「ズッキー ニ,また貰って来たけど,どうする?」と質問すると,ズッキーニのてんぷら, ラタトューユ,ズッキーニブレッド ,ズッキーニ味噌田楽,マーボーズッキーニ,ズッキーニのソテー,ズッキー ニのひき肉挟み揚げ,ズッキーニコロッケ,ズッキーニバー,ズッキーニ 鍋,.....有りがちな料理方法から創作料理まで列挙され,処理方法には困 らないみたい.

ズッキーニのてんぷらを一度試しましたが,これは美味です.マーボーズッ キーニも美味しそう.コロッケあたりになると単なる増量材か? ズッキーニバー というのは,何だか良く分らない.ズッキーニ鍋なんてのは却下.

そんなこんなで貰ったズッキーニを何とか消費すると....はい,ご想像の 通り,次のズッキーニがやって来るわけです.


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