論文が世の中に公表されるには,第三者によるチェック,つまり査読の洗礼を受けねばなりません.誰が査読するかは論文著者には(基本的に)秘密なので,色々と胡散臭い噂話・都市伝説が存在します.以下,全部僕が聞いた話.真相は?
論文執筆者と査読者は,しばしばライバル関係にあります.同じような研究をチェックできるということは,その人も似たような仕事をしているということ.そんな人がライバルの最新の論文の査読をすることになったら?
その原稿には自分が長年苦労してきた研究のすばらしい成果が書かれています.これを出版されては今までの苦労が水の泡.敵に先を越されまいと妨害工作.つまり,査読レポートを何時までも提出せずに,その間こっそり自分も同じことをやって,論文にまとめてしまう.以下,物理学者Dr.Aのモノローグ.
論文を投稿したんだけどさ,一年間ナシのつぶて.そしたらさ,突然ライバルの****が全くおんなじ論文出しやがったんだ.あれ,絶対あいつが俺の論文を止めてたんだぜ.
Dr.Bは研究成果がとても実用的だと理解しつつも,研究成果は広く公表され共有されるべしとのサイエンティスト魂から,それを論文にまとめました.その査読結果を待っている間に知った衝撃的事実.
業界大手の****がさ,どうやら僕の研究成果をそのまま応用したような特許を申請したらしいんだ.おっかしいなぁ,なんであの事を知ってたんだろ.
ちなみにこういう特許が認められるかどうかは,国によります.
物理学者Dr.C,彼は投稿した論文中の物理公式が,その論文公表前に漏洩したと憤慨しています.おそらく査読者がこっそり盗んだんだと.その自衛策として彼は,
重要な結果だったら,査読に回す原稿にはわざと嘘を書いておく.例えば
E = m c 3
みたいに.
実際に印刷に回る直前に修正するんだとか.トラップかぁ,なるほどねー.これなら査読者のインサイダー容疑はバレバレです.
査読システムの限界は議論のあるところです.他人の論文の剽窃が査読で全く気づかれないまま出版されたり,もっと酷い話になると,コンピュータソフトでランダムに生成された論文モドキが査読を通過したり.
査読する側も人間だし,そもそも自分の仕事の合間にやってる,いわばサービス残業なんだから,ある程度は仕方ないと思うんですけどね.何故か知らないけど,今年はやたらと論文査読が回ってくるし,日本は盆休みっぽいし,何となく愚痴りたくなってこんな文章書いてます.