「お疲れ様!今日はどちらまで?」
「えーっと,中央区の猫村マンションっていう所なんですが,分かります?」
「名前だけじゃちょっとねえ.通りの名前は?」
「確か,渡辺通りから欅通りに入った先だったと思うんだけど....」
「それだけじゃねえ.住所わかりません?カーナビあるから」
「お客さん,お仕事で?」
「ええ,出張なんです」
「へ~,どちらから?」
「...えっと,東京から(海外とか言ったら面倒そう)」
「休日なのに大変だねー,仕事終わったら,しっかり代休とらんとね」
「ええまあ,取れればいいんですけどね」
「休めんとね!でもまあ仕事があるだけマシばい.こっちはもうあがったりやもん」
「お客さん,少ないですか?」
「今朝一人あったっきりやねえ.中州でね,朝早かったばってん,お客さん,家まで帰るっちゅうばってん,もう酔っ払っしゃっとうとよ」
「週末ですもんね」
「一晩中飲んどらっしゃっとじゃろうね」
「へえ...」
「そげんかお客さんやろ,もう絶対車内で寝るば思っちょったもん.そいけんが,住所ば乗った時に絶対に聞いとくったい.カーナビに入れとったら,もうお客さんに言われんでも何とか送り届けれるやろ」
「なるほど,便利になりましたね」
「お客さんの行き先も,こんカーナビばつけちゃったら,なーんも心配いらんもん」
「車内で寝てしまうお客さん,多いんですか?」
「もー,土曜の朝とか,そげんかお客さん,多かっちゃもん.朝まで飲んで,不景気とか何処の話かいうごたる.景気悪いなら,さっさ前の晩の電車で帰ればよかっちゃけん」
「電車無くなって,仕方なく朝まで飲んでるんじゃないんですか」
「そうそう,んで,朝になってやっぱ電車乗るのが面倒なっとんしゃったい.タクシーつこうて帰っとったら,意味なかっちゃん.どうせ会社の金ばつこうてタクシー乗っとらっしゃちゃろうけど.あ,お客さんも,会社からタクシー代,出とうとね」
「あ,いや.今日はたまたま荷物が多かったからタクシー使っただけで...」
「わはは,そげん無駄使いして,かみさんに怒られてもしらんばい.まあでも折角の出張やもん,ちょっとくらい遊んでもよかっちゃなかとね?お客さん,旨か魚ば,堪能していかんね.博多っちゅうたら,もう酒と魚は外せんばい.一晩中飲んどったら,翌朝のタクシー代,高くつくばってん…」
「あっ」
「ん?」
「さっき,猫村マンション,通り過ぎました」