2007/01/29
職場のアメリカ人に(っていうと変ですが)日本文化にとても造詣の深い方がおられます.歌舞伎や浄瑠璃についての講演をするほどです.たまに僕のオフィスにやってきて「オオ相撲,観マシタカ?」とか「New Yorkデ,歌舞伎ノ公演ガアリマス」とか話して行かれます.申し訳ないんですが,相撲は観ないし,歌舞伎の公演は遠い世界のお話です.
その彼から「ちょっと手伝って欲しい」と頼まれました.今度,能についての講演をするので,その発表資料作り関連だそうです.能ですよ,能.日本人として,世阿弥・観阿弥,当然知ってますよね.狂言との違いも知ってて当然ですよね.何と言っても日本が誇るUNESCOの世界無形遺産です.
依頼内容は,講演資料のドラフトをPowerPointで作ってみたので,それがちゃんと出来ているか確認して欲しい,特に能についての日本語の英訳が間違っていないかどうか,というもの.白状します.能なんて観た事も聴いたこともナッシング.そもそもPowerPointを僕んとこに持って来る事自体が間違ってるんですが(ワープロ以上に使いません).とにかくファイルをパラパラとめくりつつ,音楽辞典,日本語大辞典,能に関するweb siteやらを勉強し,にわか日本人となりました.
能の専門用語の英訳もややこしいんですが,さすがに彼は私なんぞ足下にも及ばない日本文化スペシャリスト,英語で能を紹介する書籍を次々と引用していますので,かっちりとした訳になっています.で,ちょっと悩んだのが幽玄という言葉.能とは切っても切れない幽玄の美という概念.これを英語で説明するのが難しい.
彼の訳では「神秘的な暗さの美しさ」みたいになっています.でも何だかイメージがちょっと違う気がするのです.幽玄の美というと,例えば霞んだ山に優雅に浮かぶ山桜とか,奥深い山の濃い緑のなかにかすかに聞こえるせせらぎの音とか,とにかく簡単には説明できないんですが,そういう深く微妙ではかない優美な印象なのです.
日本語大辞典には幽玄の英訳は出ていません.online辞書の英辞郎では subtle and profound となっています.たしかに微妙で深い感じとしては,こちらの方がよさそうです.文化を別の言語で表現することの難しさを,改めて感じました.