アルプス交響曲

標題音楽(program music)は音によって文学・視覚的なものを表現するもので、「タイトル」が付いているから「表題音楽」というのとは、ちと違います。小学校の音楽では、『表題が「田園」と付いているから、これは田園の風景を描写したものであるぞ』なんて教わったと思いますが、表題が付いているからと言って、必ずしもそれを描写したものとは限りません。運命交響曲とかは主に日本で使われているニックネームであってBeethovenが意識して付けたもんではありません。

ロマン派の時代において、黙々と表題無しの絶対音楽を書き続けたストイックな変人はChopinで、「子犬のワルツ」とか「雨だれの前奏曲」なんてのは、それを描いたものと説明されていますが、楽譜上にはそんな言葉は出て来ません。もっとも、ニックネームが付いた方が、人の覚えも良く、ポピュラーになりやすい利点はありますが。

標題音楽といえば、Richard Strauss。この人の場合必ずFirst name付きで呼ばれるのは、ワルツの王様J.Straussと区別するためで、村上とか井上と言っただけではどの作家の事なのか分からないのと同じ理由。このR.Strauss、物語に沿った音楽を多く書いていますが、アルプス交響曲(Eine Alpensinfonie)という交響詩は、
山の夜明けから登山途中の風景、そして山頂、下山途中に嵐にあって這々の体で家にたどり着き、まずはビール一杯のつもりが、ちょっと飲み過ぎて酔いつぶれてしまうという話を音絵巻にしたもの。なお、途中から自分の体験と混線しているようです。R.Straussの作品の中ではちょっと人気の低い曲ですが、音楽で風景を表現する腕前は中々のもの。

この曲の中でとても奇麗な旋律が、”Auf blumige Wisen”という所で一瞬出て来ます。1時間ちかい大曲の中のたったの16小節ですが、まさにだだっ広い草原に咲く小さな草花といった風情。

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