ピアノを習った人なら分かると思いますが、ソナチネあたりの楽譜はとてもシンプルで、音符の他に、音の強弱と全体のテンポ程度しか指示されていません。あとは、曲の最初にAllegro Vivaceのようなイタリア語の抽象的な指示があるだけです。
しかしながら作曲家が表現の幅を広げたいためか、イタリア語に不自由な作曲家が増えたためか、楽譜に余白が増えたためか、次第にややこしい指示をドイツ人ならドイツ語で、フランス人ならフランス語で楽譜に書き込むことが増えてきます。
中でもそれが激しいのがErik Satieで、奇妙な言葉が楽譜の中にちりばめられています。例えば「疲れて」、「謎めいて」、「食べ過ぎないで」、「偽善的に」という指示があり、その通りに弾くのはかなり難しそうです。もちろん冗談みたいなものなので、まじめに指定通りに弾く必要は無いのですが(と言うか、食べ過ぎないように弾くって???)。
演奏の指示だけでなく、冗談や何やら謎めいた言葉もたくさんあります。「ひからびた胎児」という組曲の第2曲、『シューベルトの有名なマズルカからの引用』、でもそこで演奏されるのはショパンの葬送行進曲。そもそもシューベルトにマズルカは無いだろう。
なかでもSatieを有名にしているのが、Vexations(ヴェクサシオン)というたった2行の少々イライラするような曲で、1回弾くだけなら30秒ほど、でもこれを840回繰り返せとあって、全部弾くには数時間かかるというピアノ曲としてはおそらく最長の音楽。バカバカしいですが、たまにマジでこれを演奏する人達がいます。学園祭の余興でありそうな、何人かで交代しながら演奏する駅伝コンサートですが、弾く方よりも聴く方がたまらないですね。こんなの。
実はさらに長いSatieの曲があって、それは「スポーツと気晴らし」という組曲にある「タンゴ」。最初と最後にセーニョ記号があるだけで、曲の終わりが見当たりません。どうやら永遠に繰り返せということのようです。どうせなら、こういう曲をコンサートマラソンでやって欲しいものです。僕は聴きに行こうとは思わないけど。








困るんです、フランス語で書き込まれていると・・・。
ドイツ語ならわかりますし、イタリア語も音楽用語でなんとか。しかし、フランス語となると〜。
うーむ。近代−現代系は「何故か」苦手でガーシュインなんかも受け付けない私なのですが、このあたりにその原因があるんでしょうか(笑)。
つまんないやつなのかもしれません<私
>TAMAさん、
ここで出したのは、ちょっと「変」なやつの例で、近代もの全部が「変」なわけじゃないですよ。
でもサティやガーシュインを受け付けないなんて、かなり正統古典・ロマン派ですね。
ドビュッシーあたりはピアノ弾きには必須科目だと思いますけど。
>nyf1403さん、
そうそ、フランス語は困るんですよね。分かんないから。
m.d., m.g.というのが、右手、左手で取れという意味だと理解するのに、かなり時間がかかりました。
赤いバイエル、黄色いバイエル、そしてソナチネと進み、挫折した私です。あの時続けていれば、と今になって後悔しています。なにか1つ楽器が演奏できたら良いですね。Satieの楽譜の話、とても興味深く読ませていただきました。
ありがとうございます、楽貧さん。
ソナチネが弾けるなら、今からでも色々とチャレンジできますよ。
Satieなら、まずはジムノペディあたりを試してみてはいかが?
ドビュッシーは学生時代思い切りソリの合わなかったピアノ教師がいつも恍惚とした表情で胸の前で手を組みながら、「ああっ!素晴らしいのよねーっ!ドッッッッビュッッッッッシィィィィィッ!」と叫ぶのを毎日効かされて大嫌いになってしまいました。
いや、そのせいかどうかはわからないんですが、2つのアラベスクやら子どもの領分やら?課題だから弾いたけど…というだけで。いまだに苦手です。
シューマンも飛翔を弾きながらどこが良いのか全然わからず…。困ったモンです。
こんにちは。
いちおピアノ習ったことはあるものの、楽貧さんと同レベルでやはり挫折。
どんなに一生懸命練習しても弾けるようにならなくて。
だからというわけでもないんですが、音楽全般と疎遠な珍しい人種です。
でも、クラシックの楽譜にはこんな可笑しい一面があるんですね。
演奏者泣かせかもしれませんけど、思いっきり笑っちゃいました。
>TAMAさんへ、
ドビュッシーは、「月の光」みたいなロマンチックな小品の方がポピュラーですが、
本領を発揮するのは、版画とか前奏曲集あたりからですね。
子供の領分では、曲の中で時折現れるスゴく奇麗な和音、これを弾きたいがために
最初から通して練習してました。
まあ、スバラッッッッスィィィィーと叫ぶ程のことは無いですが。
ちなみにシューマンは僕も苦手です。子供の情景以外は、弾いたことありませんし、
面白いと思った事も。。。
ポージィさんへ、
音学じゃなくて音楽なんだから、楽しめないとね。
大人になってからピアノを改めて練習する人も多いみたいですよ。
日本のピアノレッスンの困るところは、やれグレードだチェルニーの何番だ、と
やたらスキルを数字で表そうとするところ。算盤何級とか、将棋何段とか見たいに。
上達の度合いを知るには分かりやすいやり方ですが、これじゃ楽しめませんよね。
なるほど、筋がねいりのシュルレリストですね。いいねえ。(金色の♪がとびだすように)とか(いったらかえってこないように)とか(とりがとんでいってひからびておっこってくるように)とか(うみのそこで魚がダイヤモンドに変化するまでくりかえせ)とか(かたつむりが進化してなめくじになるまで)とか(こまがちからつきてたおれるまえにおわれ)とか(ピノッキオの鼻を折ってからはじめる)とか(ベートーベンの前にはじまれ)とか(2000メートルクロールしてから弾き始めること)とか(鍵盤のどこかに200ボルトの罠をしかけてから弾き始めること)とかピアニストも大変ですねえ。
とくさん、次々と湧いてきますねー。
「いったらかえってこないように」と「かたつむりが進化してなめくじになるまで」は本当にありそう。
鍵盤の罠も面白そうですけど、弦にボルトを挟め、とか書いている人もいますね。
にたような精神構造をシュルレアリストはもっていますね。夢をみるように詩をかくのが目標でございます。
なるほど、夢を言葉に写していくんでしょうか。
なかなかシュールな精神構造ではあります。
そうです。それこそがシュルレアリスムですね。夢は覚めた瞬間に消えるときも多いです。夢遊病患者のようなロベール・デスノスやフィリップ・スボーがうつつにしゃべるのをアンドレ・ブルトンが書き留めると「磁場」になるわけですね。
スタートレックに夢の世界すなわち無意識を同化する宇宙人がでてきますが意識を同化するボーグより怖さが少ないのはなぜでしょう。夢、無意識がさしあたっての深刻な問題ではないからですけど、よく考えると意識と無意識は錯綜して日常があるのです。