5月の休日物語,その1

連休だと言うのに出勤である.取引先からシステムトラブルの連絡を受け,急遽会社へ駆けつける羽目になった.普段なら満員の電車に,座って通勤できるというのも皮肉なものである.

博多駅
博多駅

一足先に鈴木先輩が会社に到着していた.このシステムを担当する美人プロジェクトリーダである.

「本田君,ここんとこ,もう一度テストしてみて」

川崎サツキが担当した部分である.ちょっとそそっかしい新人の女の子である.鈴木先輩もサツキが作った部分が怪しいと睨んでいるようだ.プログラムをテストしながら,自分のキーボードを打つ音だけが響く静寂の会社の中で,さっきから気になっていたことを先輩に聞いてみた.

「あの,鈴木さん,どうして川崎本人を呼ばないんですか?」
「ああ,さつきちゃんね,連休を恋人とハワイで過ごすんですって」
「え〜,それで俺が呼ばれたわけ?」
「本田君,優秀だから,問題解決なんてすぐよね」

笑顔の素敵な鈴木先輩にそんなこと言われたら,川崎への怒りもファブリーズでさっと一吹きである.実際,休日の会社に男女二人っきりの状況である.もしかしたら何かが始まるんじゃないかと期待が膨らんできたのも事実である.

午後になり,なんとか作業終了が見えてきた.このまま順調に行けば夜までには終わるだろう.鈴木先輩の黒くて長い髪を横目でチラチラと見ながら,もしかしたら夕食を一緒になんてこともあるかなと,少しワクワクしてきた.

「本田君,なんとかなりそうね」
「ええ,この調子なら夜までには終わりますね」
「じゃあ悪いんだけど...」

鈴木先輩はおもむろに椅子から立ち上がると,

「さつきちゃんが空港で待ってるから,あとはよろしくね!」

そう言って,机の下からスーツケースを取り出し,会社を出ていった.

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「5月の休日物語,その1」への8件のフィードバック

  1. つかぬことを伺いますが、
    鈴木先輩(女性)・・・多分

    さつきちゃん(女性)

    まさかの恋人同士なんですか?

  2. 鈴木先輩は社会人になっても髪を伸ばしたままの帰国子女の男性で(海外が長い男の子は母親から日本語を吸収するので言葉遣いが女性的になる)、本田君は自分の事を俺というボーイッシュな女性、というかそんなことよりもハワイに行くんだったらなんで連休に入ってから出発するのかそっちの方が気になります。

    1. misssyさん,あとで鈴木先輩に聞いたんですが,チケットが取れなかったそうです.連休のご計画はお早めに.ハワイを諦めて鬼怒川温泉あたりにしとけばよかったのにね.

  3. コメント難しいでしゅ。

    博多は人、人、人です。博多駅は便利なところに位置しているんでしょうね。駅は国際色豊かどころか日本色も豊かです。日本語が日本語に聴こえません。ある意味、博多駅は面白いところだと感じました。

    イタリアミラノ博スタートです。「食」がテーマのようですが、現地委員さま行かれますか?

    1. いたずらリスさん,そりゃ博多弁は日本語には聞こえんばい.新しくなった博多駅の,正面2階テラスが,いまだに意味不明です.あれ,なんであるんでしょうね.
      ミラノは来月行くので,いいです.

      1. 博多駅正面2階テラス(凸部分)は、トム・クルーズ御一行さまのステージとなったところです。別な時にも同じように使われてました。時々そこにコギコギ自家発電自転車が登場するんですけど。

        ミラン日本館へ行くと日本の和食レストランと出会えますけど、どうなんでしょうか?

        1. いたずらリスさん,どうせなら,あのテラスの上下で,ロメオとジュリエットごっこやっちゃったらどうでしょう.定期公演にしたら,耳目を集めますばい.博多はやっぱちゃうね.
          ちなみにロメオとジュリエットの舞台になったヴェローナに,ロメジュリの家があります.あれって何なんでしょうね.

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